何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「光の伝説」

f:id:fukenko:20191231202528p:plain


 年の瀬になると追い込みでプログラムの紹介数が増えます(おい)。というわけで今年最後の打ち込みプログラムは「光の伝説」です。
 今年入力したプログラムの本数は全部で18本。例年よりも少ないです。というのもこいつの入力とバグ捕りに大半を費やしたから*1。それほどまでにバグ捕りに苦戦したのですよ...(泣)


 本作も昨日紹介した「バラン」シリーズと同じく、誠文堂新光社の「MSXソフト集part4」に収録されています。ジャンルは3DRPG。キャラクターを鍛えながら迷宮を探り歩き、ラスボスを倒すというおなじみのスタイルです。全3本のリストからなる構成で、プリントされたページ数にして35ページですから相当な大作。大作らしく壮大なストーリーが付いてるんですが、親友に裏切られ外人部隊送りにされた飛行機乗りが、時空の歪みに巻き込まれて飛ばされた異世界で光の戦士として目覚め、闇の悪に立ち向かうとかいう、半分どこかで見たような筋書きです。苗字はたぶん風間だな(おい)。


f:id:fukenko:20191231202805p:plain
丸ぼっちマークは通れるドアの印です
 さておき、舞台となる迷宮は3D表示*2されます。広さは64x64。全容が見えないので数字以上の広さを感じます。激遅なので、blueMSX等のエミュレーターで2~3倍程度の早さにして遊ぶと快適です(おい)。敵モンスターは26種類が登場。それぞれに専用のグラフィックが用意されてあり、打ち込みRPGではなかなかの数です。
 まずはバグ捕りのため、ひととおりプレイして怪しいところを洗いだそうと試みるのですが、いきなり壁にぶち当たりました。この作品、ゲームプレイを軌道に乗せるのがかなり大変なのです。


f:id:fukenko:20191231202903p:plain
回復薬か毒薬か。でも確実な回復手段はデータロード(おい)
 このゲームには、宿屋とか命の泉といった、無制限に体力を回復できる施設がありません*3。回復は効果がランダムかつ微少なドロップアイテム頼みです。命からがら敵を倒しても、その後体力を万全に回復させてまた敵を狩るということができないので、すぐじり貧になって死にます。回復しながら少しずつでもキャラクターを鍛え、倒せる敵を徐々に増やして行ける範囲を広げていくというRPGの定石が通用しないため、非常に困りました。いったい何度ゲームオーバー画面の墓石を拝んだことやら(泣)。
 進めあぐねていたところ、セーブしたデータをロードすると体力が相当に回復することにたまたま気づきます。これで安定して進めるようになると、ようやく光明が見えてきました。


f:id:fukenko:20191231203334p:plain
マップデータロード中。容量4Kバイト。たかが4KB。されど4KB。
 レベルが上げられるようになったら、次はマップ作りです。この手の3D迷宮ゲームをプレイするならマッピングが肝心ですが、ここでも苦戦しました。マップ上の現在地座標も、自分が向いている方位も画面には表示されないため、一度方向や現在地を見失ったりすると、すぐ迷います。さらに悪いことにはマップ上には至る所にテレポーターの罠が仕掛けられてあります。引っかかるとなんの合図もなしに別の場所に飛ばされてしまうので、よほど気をつけないと正しいマップが作れません。
 手でマッピングすると途方もない手間が掛かることが明らかだったため、結局、マップデータファイルを直接解読して、マップを作ってやりました(おい)*4。探索中に現在地を見失ったら、セーブ後にBreakして現在地座標を格納した変数を参照するという荒技も使用。さらにテレポーター対策として、罠に引っかかったら音が鳴るようリストを改造してやりました*5。DUMAPICぐらい使えるようにしてくれよ!(泣)。


f:id:fukenko:20191231203623p:plain
武器は拾って入手する。使うほど減るリアルな仕様(泣)。
 ともあれ、これでなんとかまともにプレイできる見通しが立ったので、ぼちぼちキャラクターを育ててつつ、どこに何があるかを確認しながら、バグを洗いだしていきます。しかしやはりというか、そう簡単ではありません。貧相な回復手段、把握しづらいマップの次に立ちはだかるのは、独自のパラメーター解釈と成長システムです。
 いちおうこのゲームにも「かいきゅう」とか「けいけんち」「せいしんりょく」といった、RPGおなじみの属性値が存在します。しかし他の多数のRPGにおけるそれとは意味や仕様が微妙に違っています。
 よくあるRPGでは、経験値を稼ぐとレベルが上がり、それに伴って攻撃力や魔力といった他のパラメーターが一斉に上がる、というふうに成長します。しかし本作ではそういうことがありません。「けいけんち」は「キャラクターの戦闘力」程度の意味で、成長に寄与しません。他の作品における経験値にあたるパラメーターは「せいしんりょく」です。ええい、ややこしい!


f:id:fukenko:20191231203920p:plainf:id:fukenko:20191231205154p:plainf:id:fukenko:20191231205211p:plain
バラエティ豊かな敵キャラ。弱いのから狩っていくのがセオリーです。
 さらにその経験値に匹敵する「せいしんりょく」を上げればレベルにあたる「かいきゅう」が上がるのですが、「かいきゅう」が上がっても他のパラメーターが上がるということはありません。実は戦闘勝利時、ランダムでパラメーターが微増する仕組みなので、キャラクターを育てるためのいわゆる「経験値稼ぎ」にあまり意味がありません。種類は何であれ、より多くの敵と戦うことが成長の鍵です。


f:id:fukenko:20191231210220p:plain
殴れば殴るほど強くなる。君がッ 泣くまで 殴るのをやめないッ!(違)
 クリア条件は「かいきゅうが20以上の状態でラスボスを倒す」ことです。しかし戦闘で得られる経験値..もとい「せいしんりょく」は微量で、しかも敵はあらかたがフィクスドエンカウンター*6。ですので普通に敵を狩っているだけでは必要量に達せず、クリアできません(おい)。
 どうしたものかとプログラムを読むと、敵を殴って攻撃した場合「かいきゅう」が微増することが判明。そこでそれなりに頑丈でかつ確実に逃げられる敵を選び、遭遇したら二、三発殴って即逃走、フィクスドエンカウンターゆえ倒さない限りは同じ所にまだ敵が残っているので、これを利用してまた同じ敵に二、三発殴りかかり即逃走...という、生かさず殺さず同じ敵をなぶり続けるという戦法を編みだし、なんとか必要「かいきゅう」を積むことに成功しました(おい)。


f:id:fukenko:20191231204257p:plain
ラスボス・エビルウィザード・アーロン2世。苗字はたぶん神崎(おい)
 打ち込みRPGAVGのデバグは厄介です。なぜなら怪しい挙動があっても、それが仕様かバグなのか一見だけでは判らないから。ですのでいちいちリストを読んで判断するしかありません。さらにこの作品は、書籍に印刷されたリストが変なところでインデントしてやがってMSXの画面表示と違うもんですから、画面と紙面をと見比べるのが大変でした。
 他にも通り抜けられる壁とか、遊び方に載っていない操作*7とか、重要な情報があれこれ説明されていないため、バランスの悪さとも相まって、ゲームの仕様を把握するのに非常にホネが折れました。おかげでデバグに時間がかかったんだよ!(号泣)*8
 さて、それで入力開始から苦節数ヶ月の末、ラスボス悪の魔術師・アーロン2世を倒すことに成功し、どうやらあらかたバグも捕れたらしいということで、なんとかここで紹介できる運びとなりました。いやぁ、よかったよかった。


f:id:fukenko:20191231204155p:plain
ゲームオーバー画面。進め方が判るまで何度拝んだことやら。
 全体的に不親切でバランスは決して良好とは言えません。乱数頼みの部分も多く、リセマラが必須の攻略方法だったりします。ストーリーやデータを参照すると、登場させる予定だったアイテムがいくつか確認できますが、どういうわけか、本編 では使われることがありませんでした。
 こんな具合に、やはり本作は素人制作で、作りの粗さ甘さがそこかしこで目に付きます。当時らしい不条理さや不親切さも完備。正直、あまり出来の良いゲームではありません。


f:id:fukenko:20191231204837p:plain
没キャラ各種。本来はどこかで使うつもりだったんだろうな。
 しかしながら本作には、ダメなゲームと切って捨てるには忍びないものがあります。
 1985年当時、日本のPCゲーム界では、CRPGという新しいジャンルが急成長していました。TRPGの面白さの再現にこだわった本格的なものからテイストを軽く取り入れたなんちゃってRPGまで、プロのソフトハウスもアマチュアも、RPGを指向した作品を続々と生み出しましたが、どの作品にも作者なりのRPGの解釈というものが見られ、自由な作品が多かったようにおもいます。
 本作は「RPGもどき」と自称しながらも、RPGの面白さを再現しようという意欲がそこかしこに感じられます。それが広大な3D迷宮であり、様々なキャラクターであり、独特なシステム、なのでしょう。


f:id:fukenko:20191231204943p:plain
エンディング。粗こそ目立つが解き方が判れば十分クリア可能だ。
 CRPGのひな形の一つとなった「ドラクエ」が登場する以前、ARPGの祖「ハイドライド」「ドラスレ」が登場したばかりの頃。「画面の向こう側にはどんな世界が広がっているのか?」 和製CRPGの黎明期とも呼べる当時は、新しいジャンルならではの、何が出てくるかわからない期待感や熱気に満ちていました。この混沌の中から数々の名作が生まれ、その後の和製CRPGの礎を築きます。


 成熟したCRPGが数登場している現在からすればその内容は稚拙なものです。しかしこの「光の伝説」には、和製CRPG黎明期ならではの自由さや熱気、新しいジャンルが勃興するときの勢いというものがひしひしと感じられます。ここにも「画面の向こう側の世界」が、確かに存在しているのです。

*1:本人の怠惰にはこの際目をつむる(おい)

*2:当然ながらMSXのLINE命令を駆使したワイヤーフレーム表示。ポリゴンなんてスゴ技はありません。

*3:没データを見る限り、回復拠点を盛り込む予定はあったようです。

*4:おかげでマップデータに打ち間違いがあったことに気づきました。てへ(・ω<)

*5:現在地を常に表示できるようにもできましたが、めんどうくさいのでやめました(おい)

*6:固定遭遇式。敵の出る場所と種類があらかじめ決められている、という方式。

*7:移動時にCキーを押すとパラメーター表示を更新できます。増減のたびに随時更新する仕様でもないので、知ってないとキャラクターの状態が判りません

*8:改めて本人の怠惰にはこの際目をつむる(おい)