何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

摩耶山に登ってきた


中尾根コースから見た摩耶山山頂の図
GR IIIで撮影。Photoshop Elementsで縮小


 というわけで先日、摩耶山に登ってきました。摩耶山は現在の鶴岡市、旧温海町と旧朝日村の間にある山です。標高1019m。荒井が住んでいるところからはけっこう離れているので、永らく、登りに行くのが大変そうな山というイメージがありました。ところがコースタイムを見てみれば十分日帰りできることが判明し、だったら登ってみようぜと行ってきた次第です。





 登山口やコースはいろいろあるのですが、アクセスのよさと登りやすさを考慮して、今回は通称「周回ルート」を選択。旧温海側の越沢地区から取り付き、途中で関川からの登山道に乗り換え山頂を踏み、そこから中尾根コースを下って越沢まで戻ってくるというルートです。





 越沢口に至る道は、関川峠に往来する際、これまで何度となく目にしています。湯田川から国道345号線に沿ってひたすら道なりに進み、一本木峠を越え木野俣から少し南に下ったところ、越沢の集落を過ぎるとすぐに「摩耶山登山越澤口」と書かれた標柱が現れます。ここで国道から摩耶山林道に分岐し、1キロ強ばかり分け入って「瀬戸橋」なる橋を渡ったところが登山口。ここに到着したのが午前9時。単車を降りたら、いよいよ登山開始です。






 コースの序盤は、庄内小国川上流の沢に沿って進みます。岩と奔流が織りなす渓流の風景が目を楽しませてくれますが、勾配こそ緩やかながら見下ろす谷はずいぶん深く、足を滑らせたらひとたまりもないことは一目瞭然です。気をつけながら歩いて行くと、9時26分に「小浜の茶屋跡」なるポイントに到着。ここで中尾根コースから分岐し、沢を離れて関川コースへと向かいます。






 茶屋跡からはしばらく「クセ穴大森林」なる森の中を進みます。高度が上がるにつれ、周囲は杉からブナの林に変わり、勾配もきつくなってきます。当日の山形は全県的に30℃を超え、歩けば汗が噴き出てくるものの、山の中は不快な暑さではありません。
 この区間は「初心者コース」とも呼ばれているようです。足に覚えのある登山客は、中尾根コースや七滝を経由するルートを登るんだそうですが、荒井はへなちょこ登山者なので、見栄を張るのはやめときました(おい)。






 10時15分に関川コースに合流。ここで主稜線に上がり、山頂までひたすら上り詰めることになります。10分少々歩いたところにある山小屋は、土間に簡易寝台がある程度の掘っ立て小屋で、風雨をしのぐだけの簡素な作りです。休憩するのはやめといて、中の案内書きだけデジカメに収めておきました。






 その案内書きによると、「摩耶山」の名は、「厩」に由来するのだそうです。スサノオがこの山に馬を繋いだから「厩山」なんだとか、ふもとに都岐沙羅柵(つきさらのさく)が設けられた際、「厩城輪神社」なる鎮守の神として崇められたとか伝わっていますが、いずれにせよ古代、朝廷が当地に進出してきた頃から称されてきた、由緒ある名のようです。
 山はその後、金峯修験の修行場として発展します、小屋からひと登りしたところにある六体地蔵尊や、厩神社の奥宮は、この山が信仰の対象であったことを物語っています。






 そんなこんなで11時5分に山頂に到着。多くの山は、中腹あたりに眺めのいい場所がいくつかあるものなのですが、この摩耶山の場合、山頂に至る道中の大半は森か茂みの中で、すっきり遠くを見渡せる場所というのがなかなかありません。山頂間近に至ってようやく眺めが開けてくるのですが、それがこれまでの鬱憤を晴らすかのような大展望。眼下には旧朝日村の集落や荒沢ダム。ダム湖の背後には以東岳をはじめとする朝日連峰の山々が並び、東に目をやれば月山がどっしりと座っています。北にはかろうじて、雲の上からてっぺんだけを覗かせた鳥海山が見えました。夏は空気がよどむおかげで意外と遠くが見渡せないことが多いんですが、今回はなかなかに恵まれました*1



右が鑓で左が鉾。あそこに登る人もいるそうな(汗)

インスタ映え、何それ食えるの?(おい)
 目の前に見える二つの峻峰は鑓ヶ峰と鉾ヶ峰。山頂付近は東側がすっぱり切れ落ちた崖になっていて、修行場らしい険しさを見せています。三角点の脇に陣取って湯を沸かし、昼食はお手軽にカップ麺。山のてっぺんで啜るカップ麺の旨さは格別ですが、眺めがよければなおさらです。





 ちなみに摩耶山山頂の三角点も、月山や葉山同様の一等三角点です。そうとは知らず登ってきて、現物を見てようやく気づきました(汗)





 昼食の後、11時55分に山頂を出発。下りは中尾根コースをたどります。登山ガイドや地形図で判っていたことですが、まぁ急です。関川コースを遙かにしのぐ急峻な下りが続き、足下に気を遣います。さらにこの暑さでだいぶ水分が失われたおかげかいつの間にやらへとへとで、少し歩くだけでも息が上がりました。持参した水だけでは少々足りず、途中何度も休憩を挟みながら下りましたが、正直、登りよりも下りの方が堪えました(泣)


うがいだけでも躊躇するようなうがい場
 山小屋のすぐそばに「うがい場」なる場所があります。登山ガイドには水場として表記されていて、現にコンクリートで水受けのようなものが設けられているのですが、実際には淀んだ水がたまっているだけで、水場としてアテにはできないという有様でした。ここで水を補充するつもりだったのに!(号泣)






 かくて下ること1時間弱。垂直なハシゴ場が現れます。手すりをつかみながら一歩一歩慎重に下りきれば、これで急な下りはおしまい。13時9分、摩耶山屈指の名勝、弁財天の滝に到着です。
 ここは落差のある滝が二つ並ぶ奇勝です。流れる沢は水量豊富で冷たく、暑さとこれまでの道中でくたびれた身を休めるにこの上ありません。冷たい水でさっそく顔を洗い、汗だくになっていたTシャツをすすぎ、水筒に水を汲んで3回おかわりして、ひと心地つきます。案内板によれば、滝の周辺は「夏の暑さを知らぬ涼しさ」。この涼しさを味わえただけでも、暑いさなかこの山にやってきたた甲斐があったのでありました。





 滝を後にすれば、登山口まではもうすぐです。13時38分に再び小浜の茶屋跡を通過し、13時55分に無事登山口に帰還。休憩込みでおよそ5時間の行程でした。

鼻くくり坂。八合目の難所です

弁財天の滝のはしご。落ちたら大けが
 荒井が歩いたコースは全体的に道跡が明瞭で、案内標識も充実していました。地形図と見比べながら歩けば、迷う心配は少ないでしょう。ただし足下の悪いところが多く、滑ったら死ぬだろというところも続出するので、道中決して気が抜けません。標高の割に険しい山と評されるとおり、なるほど、だから修験の山になったんだろうなと合点がいきました。
 摩耶山はよく知られた山だとおもってたんですが、当日登山口に他の車はなく、道中誰一人とも行き会いませんでした。おそらく、世間的には暑い時期に登るような山ではないのでしょう。しかし爽やかなブナ林や滝の涼しさ等々、この時期だからこその楽しさを満喫してきたのでありました。
 山は他にもさまざまなルートが選べます。個人的にはおそろしく険しいという、東側から上る倉沢コースが気になります(おい)。


締めに琴のさんに寄る。中華そば旨かったぜ

*1:条件が良ければ佐渡島まで見えるそうです