何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

「SOUZAN」




 ようやく動作確認が終わったのでご紹介。今回はポプコム86年2月号掲載の「SOUZAN」、「ソウザン」ではなくて「サウザン」と読みます。







 ゲームはご覧のとおり、「ハイドライド」に強く憧れただろうARPG。グラフィックもそっくりなら、ゲームの舞台もフェアリーランド、主人公の名前もジムならぬ「ジョー」、目的も悪い魔王にとらわれた妖精を助けることと、何から何まで「ハイドライド」そっくりです。後半になるとローパーが地上に出てくるところなんてまんまです。
 辛うじてラスボスの名前こそバラリスではありませんが、「サウザン」とはそのラスボスのお名前。怪物を倒してジョーを成長させ、宝物を集めて謎を解き、サウザンを倒して妖精を救出し、平和を取り戻すというゲームです。





 「ハイドライド」はARPGの先駆者で、30年以上の時を経た今もなお愛されているタイトルですが、この「SOUZAN」はといえば...当然といえば当然ですが、有り体に申し上げまして...比べてはいけません(汗)。


 ARPGではあるのですが、操作性は劣悪で、ジョーはおもいどおりに動いてくれません。まずは移動が苦痛です。フィールド内にはいくつか宝物が落ちているのですが、アイテムの効果は「レベルが上がる」「体力を回復させる」程度のもので、攻撃力や防御力が上がるというものではありません。効果が地味なので、拾ってもあんまりうれしくありません。というか探す事も苦痛という。プレイするほど探索したくなる魅力が失せていくというのはどういうことだ!(泣)





 戦闘は体当たり式。成長すればジョーの体力こそ上がるのですが、最高レベルになっても最弱のザコからレベル1のときと同じダメージを受けますし、最弱のザコにも最強のザコにも1単位でしかダメージが与えられません(おい)。
 そもそも「攻撃力」「防御力」という概念がないため*1、成長しても怪物を一方的にタコ殴りにできるとか、強い敵にも楽勝できるようになる、ということがありません。とにかく戦闘がさっぱり面白くありません。
 さらに悪いのは体力回復が有限式なことです。体力は手持ちのお金と引き替えなのですが、お金を稼ぐ手段が基本的にありません。ジョーには銀行に若干の預金があるので、それを取り崩しながら回復してねということなのですが...





 にもかかわらず体力は容赦なく減る仕様なので回復が間に合いません。預金残高はみるみる減るだけの一方で、いずれはじり貧に。しかもセーブやコンティニュー機能はなし。ゲームバランスもひどいもんです。遊べるゲームとして成立していません。
 お金は必要に応じて銀行から下ろすというアイディアはユニークなのですが、それをうまく生かしたデザインがされてるとはおもえませんでした。限られたリソースをうまくやりくりする、という「ザナドゥ」のような面白さもありません。





 劣悪な操作性、爽快感のない戦闘、理不尽なだけのゲームシステム。
 ポプコムは基本、傑作はとことん傑作なのですが、たまに「なんでこんなヒドいゲームが?」とおもうような作品が載ってしまうことがありました。正直この「SOUZAN」も...どうして掲載されてしまったのかわかりません(おい)。


 オールマシン語とオールBASIC、プロとアマチュアの違いは致し方ないとして*2、「ハイドライド」への憧れが強くうかがえる内容ながら、「ハイドライド」のよかったところが何も再現されていなければ、「ハイドライド」と異なる魅力も提供できていません。いわばARPGなのにARPGのいいところが全くないのが致命的でした。
 遅いなら遅いなりに。技術がないならないなりに。工夫すればいくらでもまっとうに遊べるARPGが作れることはベーマガ「DUNGEON」や同じポプコム「J」「シークレットルーム」等の作品が証明しています。
 かなり厳しいことを言えば「ハイドライド」のどこがよくてどこが不満か、きちんと咀嚼できていません。「快いアクション」「嬉しい成長」「楽しい探索・謎解き」...どれひとつとして「SOUZAN」にはなく、それに替わるものも提示できていないのです。





 ただしこの作品にもいいところはあります。それは「曲がりなりにもARPGを完成させた」ところです。
 当時「ハイドライド」に憧れて、「ハイドライド」のようなゲームを作りたいと願ったユーザーは数あまたでした。しかし多くは憧れるだけで、自分でARPGを組んだというユーザーはごく一握りでしょう。本作はかなり稚拙な出来ではあるものの、れっきとしたARPGを完成させたことだけは間違いないことで、そこは大いに誇っていいことだとおもいます。
 おそらく作者さんも、憧れを再現できるだけの技量が乏しかったことへのもどかしさは感じていたでしょう。出来はあんまりであっても、憧れのARPGを遮二無二作り上げた...その情熱は汲みたいし、賞賛したいとおもいます。


 なお、プリントの問題か、誌面に掲載されたリストが一部文字化けしています。さらに悪いことに、後に訂正記事も掲載されませんでした。いちおう訂正情報出しときます。


リマーク文の「■」=>「●」(グラフィック文字の丸)
4100行の「_」=>「♥」(グラフィック文字のハートマーク)
250ページの「┤」=>「い」
同「├」=>「う」
4400行の「┃」=>「ぅ」

*1:敵と接触すると1のダメージを与える代わり、必ず1のダメージを受けるようにプログラミングされてます。レベル等の勘案はなし。

*2:ついでにリストの書き方もヒドいの一言ですが、それはこの際目をつむろう