何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

十字屋の閉店

JR山形駅前のデパート、「十字屋山形店」は、営業不振などを理由に、午後7時半で営業を終えます。
店には閉店を惜しむ大勢の買い物客が訪れています。
十字屋山形店は、地上8階、地下1階、売り場面積が1万平方メートルを超える大型の商業施設として、昭和46年6月、山形駅前に開業しました。
最盛期の昭和56年には売り上げはおよそ100億円に上りましたが、郊外に大型商業施設が次々とオープンしたことなどから営業不振が続いていました。
また、ビルの耐震性を強化するのに多額の費用がかかることも分かり1月31日で営業を終えることになりました。
最終日の31日は、朝から営業終了を惜しむ客が入り口に集まり、開店時刻の午前10時になるとはっぴを着た従業員に迎えられて次々と店内に入っていきました。
南陽市から訪れた59歳の女性は「きょうが閉店と聞いて2年ぶりに買い物に来ました。十字屋で買った子どもの洋服などは今も大切に取っていて、閉店はとてもさみしいです」と話していました。
十字屋山形店の営業は午後7時半までで、46年余りの歴史に幕が閉じられます。

(出典・NHKニュース)


 まずは従業員のみなさま46年間おつかれさまでした。山形駅前の顔のひとつがなくなるのは、やはり山形県民として寂しいものです。


 村山地方外在住の荒井にとって、十字屋は店舗よりも、テレビショッピングでおなじみの店でした。午後4時のアニメが始まる前に放送されていて「♪今日も電話でおかいもの~十字屋~テレビショッピング~」のテーマソングとともに、8トラテープのカラオケマシン*1やらぶら下がり健康器やら売っていたものです。かれこれ35年は前、荒井が小学校の低学年だった頃のことですか。


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 その十字屋に「ファミリー食堂」なる昔ながらの大食堂があって、昭和の香り漂う料理を食わせてくれるという情報を掴んだのは去年、閉店が決まってからのことでした。
 というわけで閉まる前に食ってみたいということで、こないだ食べに行ってきました。注文したのは屋号を頂く「十字屋ランチ」。ハンバーグとエビフライ・グラタンという洋食の人気者が盛り合わせになった、お子様には堪えられないセットです。無論、かつてのお子様荒井にも。


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 おそらくハンバーグは日東ベストあたりの既製品*2。エビフライとグラタンも冷食っぽいかんじ。全て手作りという手の込んだものではないなとおもいましたが、ちょっと晴れやかなランチとしては十分な内容でしょう。かつて山形にファミレスなんてものがなかった頃、あまたの人々の「家族揃ってデパートで食事とお買い物」というささやかな贅沢の一場面を彩ったであろうことは容易に想像されたのでした。
 カトラリーは「Noritake」の銘入り。食堂は最上階にあり、南向きの窓からは白鷹丘陵や瀧山がすてきによく見えます。山形でロケをした「西部警察」には、十字屋の屋上からヘリが飛び立つシーンがありましたっけ。店の座席は色褪せて、なぜか「滅び行く時の匂いしみついてた」という文句がおもいだされたのでありました。


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 荒井が十字屋ランチを食っていた脇で、他のお客さんが皆食べているのを見て自分も食べたくなって、次はスパゲティセット目当てに、翌週また十字屋に足を運ぶこととなりました。
 今度はナポリタンとグラタン、スープにサラダがセットになったもので、これまた四十過ぎのお子様(おい)には堪えられません。真っ赤なケチャップの甘さと優しい酸味。「アルデンテ」とは無縁の柔らかいスパゲティ*3。その合間にのぞくのはハム・マッシュルームスライス・タマネギ・ピーマンと、脇を固める面々に抜かりはありません。これぞ絵に描いたような見事なナポリタンで、この味がなくなるのは惜しいと心底おもったのでありました。


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 閉店は惜しまれるところでありますが、ふりかえれば荒井が十字屋を利用したのは3回だけ。しかもそのうち2回は件の十字屋ランチとスパゲティセットです*4。寂しいとか惜しいとか言ってるわりにカラオケマシンもぶら下がり健康器も買ってませんし、当然何かを買いに行くということもほとんどありませんでした。せいぜい同じ通りにあるモンベルに寄った帰り、あぁ、十字屋があるな、デパ地下なんか旨いものないかなと脇目に眺めたくらいです(おい)。


 「何を今さら」。そんな言葉が自らの胸に去来します。なくなるのが惜しかったら、閉店決定後に駆け込むよりも、業績不振になる前に、ちょくちょく買いに行っては小金を使っておかなければならなかったのです。
 荒井は買い物や外食とはある種の「投げ銭」だとおもってます。ただお金と引き替えにモノを得る行為ではなくて、そのお店を応援するための行為。モノを「安く」「便利に」「ゲット」できればいいというのではなくて、モノに携わる人々を守ることも考えなければ、ゆくゆくはそれに関わる文化を守れないのではないか...とは物欲まみれの荒井がしばしば考えることであります。
 利用客が不振を「時代の流れ」とやらのせいにするのは大嫌いです。惜しいとか寂しいとか言いながら、(店側にそれだけの値打ちがあるかという問題は当然あるが)自分たちがお金を払わなかったことに変わりはありません。「時代の流れ」に自分が荷担しているにもかかわらず、それを棚上げするような物言いは、当事者としてあまりに責任感がないのです。


 どんなにいい店、気に入った店でも、引き合わなければ続けられません。このままでは閉店・廃業待ったなしという店も、現在進行形でそこかしこに存在しているのです。そういう店を失いたくないのなら、まだお店が元気なうちから気にかけて、ことあるごとに通っては、お金を落としておかなければなりません。十字屋のように「もう閉店します」となってからではもう遅いのです。惜しむのは今のうちから!

*1:往時山形のカラオケ機械普及率は全国1位を記録していました。なんでもあたりに娯楽がなかったから買う家庭が多かったということです。

*2:念のため言っときますが、日東ベストさんのハンバーグはかなり旨いです。

*3:この際「パスタ」なんて小洒落た名詞は使いたくない。

*4:残る1回は数年前にデパ地下で買ったお弁当