何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

禿岳に登ってきた

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 というわけで先日禿岳に登ってきました。禿岳は最上町と宮城県大崎市の間にある奥羽山脈の一座です。そのすそのは荒井にはおなじみの花立峠につながってまして、峠同様大分水嶺。かつて皐月の頃に小国郷の若者たちがこの山に登ってその年の豊作を祈願したという山であり、そのならわしに従って、今でも田植えの時期に山開きを迎えます。前々から登りたいと思っていた山で、今回が念願の初挑戦です。


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 登山道はいくつかありますが、登るのはもちろん花立峠からのコースです。峠から延びる見慣れた砂利道が山への入り口で、そこを過ぎればもう見知らぬ世界。目の前にはブナ林が広がり、「1合目」の標柱が本格的な登山道の始まりを告げます。
 砂利道のところまでは何度も出入りしているので、こんな砂利道が続いているんだろうかと勝手に想像していましたが、実際、登山道の大部分はブナ林です。


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 登山道はよく整備され幅も広く、歩きやすい部類ですが、もちろんロープ場や急な登りもいくつか存在します。5合目付近にさしかかると、泥でぬかるんだ急登が出現。滑ったり靴が泥んこにならないよう、慎重に登っていきます。
 ぬかるみの原因は残雪で、下敷きになった木が道をふさいでます。全行程中、ここがいちばん大変でした。山は標高1261.7m*1。高い分、春の訪れも遅めです。


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 花立峠のコースは県境の大分水嶺をトレースするように開かれてまして、鬼首カルデラと向町カルデラの境目でもあります。奥羽山脈の切れ欠けた場所を登っていくわけですから、ここは風の通り道にもなっているのでしょう。風が吹くたびあたりのブナ林がざわざわと大きな音をたてます。
 ところどころ痩せた尾根道も現れるので、足下にも注意しなければなりません。特に7合目から8合目のあたりは岩がちな痩せ尾根で、登山道一の難所となっています。
 ただしこういうところは抜群に眺めのよい場所でもあります。峠には断崖の宝珠を取った呪いで命を落とした村人の伝説もあったりしますが、もしかするとこの風景に見とれて足を踏み外し、滑落死したというものかもしれません*2
 旧く花立峠は異形の棲まう峠とされていました。その正体はこの豊かな自然であり、地形であるのでしょう。


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 9合目にはお不動さんの祠が鎮座しています。不動明王は水と関わりのある仏です。禿岳がふもとの小国郷や鬼首を潤す水分の山として、古くから崇敬を集めただろうことがうかがえます。
 そのとおり、お不動さんの先の登山道は大規模な残雪で覆われていました。道がわかりづらいばかりか、カルデラの底に向かった急斜面になっているので滑落が怖いです。靴底を雪に食い込ませるようなあんばいで足場を確保しながら慎重に進めば、山頂は目の前です。


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 かくて無事山頂に到着。休憩と記録時間込みで1時間45分ほどの歩きでした。峠からは460メートル強登ってきた計算。山頂には二等三角点とやけに立派な標柱が建ってます。360度の眺望が開けるという評判なのですが、あいにくの曇り模様でさっぱり見えないという有様(泣)。それでも山頂に陣取って昼餉のカップ麺や茶の用意などしていると日差しも出てきて、神室連峰や栗駒山がおぼろげに見えてきたのでありました。


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 この日は軽量化のために、火器はRSRトーブを選択。ただし山頂も絶えず風が吹き付けまして、アルコールストーブを使うにはあまりよくない条件です。そこでそこらに落ちていた石を積んで簡易風防をこしらえてやりました。我ながら涙ぐましい努力ですがわりと効果があったので、外でアルストを使うならこれもありです。


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 再び花立峠に戻ってきても所要時間は休憩等込みで約4時間。少々時間があったので、新庄の杢蔵山荘にも寄ってきました*3。去年は結局一度も杢蔵に登りませんでしたので、こちらも近々登りたいとおもいます。

*1:先年の大地震でこれから1メートルほど低くなったそうです。

*2:東側の斜面では水晶が採れたのだそうです。

*3:今回は三角山までは単車を利用。三角山の林道を使えば、山荘まではかなり手軽に行くことができます