何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

清水峠に行ってきた




「7月になる前に行けることなら行ってしまいたい。」
そんなわけで清水峠に行ってきたのでありました。
清水峠とは二口峠の一つ南にある奥羽越えの峠です。
その名はあまり知られてませんが、山伏峠とともに「二口峠」の
名の由来となった道で、山形市高瀬・高沢地区と秋保の二口番所を結んでいました。
もともと「二口」とは、二口番所で山寺と高沢に向かう二本の道に分かれ、
山形市風間地区で合流して再び一本の道になる道であることを意味します。
特に清水峠は高沢の古い名から「かうや道」とも呼ばれ、
二口番所跡の追分碑にもその名が記されています。
現在は林道が通る山伏峠が二口峠ということになってますが
二口峠ファンの荒井ですので、以前から「かうや道」も歩いてみたかったわけですよ。






山伏峠がその名のとおり、山寺の立石寺と縁の深い道であるのに対し、
清水峠は立石寺と対立した鳥居氏のもとで発展した道です。
峠入口となった高沢地区の町並みは古い宿場町を彷彿させるもので、
山寺峠口の馬形地区と雰囲気が似ています。
峠口はその高沢からさらに高沢林道を上っていったところ、
中沢林道との分岐から1キロほど入っていったところにあります。
山伏峠が現代的な林道として整備されたのに対し、
清水峠は現在奥羽山脈縦走道への連絡登山道として生き残っています。
行程の大部分は林の中を行くダラダラ坂で、それほど急ではありません。
迷いそうな所には赤いペンキで目印が付けられ、人の手もそれなりに入っている気配です。
そのかわり高瀬川上流の沢に沿って道が作られているため、
いたるところに大きな石が転がり、沢を徒渉する場所も幾度となく現れます。
さらに少々薮っぽい場所もあり、歩くのにはけっこう気を遣いました。
奥羽山脈の稜線近くに出ればブナの美林が広がります。
峠口から清水峠までは1時間半ほど。
写真を撮りながらゆっくり登っていったので、
真面目に歩けば1時間程度で辿りつけるでしょう。
峠は奥羽山脈縦走路との丁字路で、崩れかけた標識が出迎えてくれました。
同じ峠でありながら、一方は登山道、一方は林道*1
なっている様子は対照的でもあり、またどちらもそれなりに生き残っている姿は、
個性的な双子の兄弟を見るようです。





せっかくだからと二口林道の様子もちょっと見てきました。
峠から北に40分ほど歩けば、二口峠の県境ゲート前に出られます。
今期林道はまだ開通しておらず、人や車の気配は全くなし。
二口峠ではあたりまえの光景ではありますが、去年の紅葉シーズンの渋滞が嘘のようです。
そのぶん今日は堂々と林道のど真ん中を歩き、眺めのいいところを見つけては、
村山盆地の風景を楽しんできたのでありました。
あちこちにちりばめられた銀色の板はさくらんぼのビニールハウス。
特に今日はそこそこ天気にも恵まれ、月山や鳥海山さえ拝むことができました。
この光景はちょうどさくらんぼ最盛期の今でなければ見られない光景。
昔から二口峠には何度も通っていますが、荒井は初夏が最高だと思うのです。
今度は番所跡の墓石を見てみたいと思う荒井でした。


*1:厳密には古道と林道のルートは大きく違ってます