何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

鳩峰峠に行ってきた



(画像は全てGR DIGITAL III)


ここしばらく休みの度に雨降りばかりで、単車で遠出できない鬱憤が溜まってたところ、
久々に晴天に恵まれたので、鳩峰峠に行ってきました。
鳩峰峠は高畠町福島市を結ぶ峠で、特に鞍部の展望の見事さで知られています。
今回は峠を越えて福島側の茂庭まで行き、飯坂から桑折・小坂峠・金山峠と
羽州街道伝いに山形に戻ってくるというコースです。
山はちょうど色づきだした頃合い、少々気の早い紅葉狩りとしゃれこみます。
ついでにところどころヤマブドウなんかもなってまして、
二、三粒つまみながら秋の鳩峰峠を楽しんできたのでありました。





今回は稲子より先の宮城・福島側の探索が大きな目的です。
峠は国道399号線の指定を受けており、全国的にわりと知られた酷道でもあります。
福島側は茂庭まで、遙か眼下に摺上川上流の峡谷を見おろす険しい道が続きます。
さらに路上には猿の姿もちらほらと。
画像は宮城福島県境付近にある巨大な一枚岩ですが、
こんな大自然の中をこの道は通っているというわけです。






今日一番の目的はこれ、「亀石」を見てくることでした。
亀石は県境付近にある「摺上山神社」碑近くから延びる林道を、
摺上川に沿って1.3キロほど走ったところ、
二つの沢が出会う場所に鎮座しています。
高さは大人の背丈の2倍ほど、周囲は大人十数人が手をつないでやっと囲めるくらい。
端っこが少し欠けたまん丸な石で、上は苔むし羊歯さえ生えています。


この石には貞山伊達政宗公にまつわる伝説があります。
政宗公が茂庭の山中にあるこの石を大いに気に入り、
城の庭石に欲しいと所望したのですが、あまりに大きくて動かせませんでした。
しかしそれでもこの石があきらめきれず、ならばせめて自分のものにしてしまえと
国境を変え、この石があるあたりを仙台藩領にしてしまったのだとか。
二井宿峠の無理国境と同じく、政宗公のやんちゃぶりを感じさせる逸話ですな。


鳩峰峠周辺の県境は少し変わってまして、
一度山形から福島に入った後、宮城が割り込む形になっています。
その割り込んだところにあるのが足軽を住まわせたという稲子の集落で、
仙台藩南端を守る楔となっていました。
この亀石も仙台藩のそうした「楔」のひとつだったのでしょう。
ちなみに県境は亀岩のすぐ北を通ってまして、
現在は残念ながら(笑)福島県となっています。







近年の摺上川ダムの完成によって近辺の国道はすっかり生まれ変わり、
新しく生まれたダム湖「茂庭っ湖」を眺める快走路となりました。
羊腸九十九折りの峠道、巨岩転がる深山の渓谷の崖っぷちを往く「酷道」が、
いきなり十分以上な幅員が確保された二車線に変貌するのは軽く衝撃的ですらあります。
旧い集落や道はダムの底に沈み、湖畔にはところどころ、
移転された神社や記念碑などが建っています。
じっくり見てみたかったところなのですが、
なぜか今年はこの界隈でカメムシ*1が大発生しているようで、
社殿の壁にはうじゃうじゃ、単車を停めればすぐ寄ってきて、
走っていればジャケットやヘルメットにブチ当たるという有様で、
あえなく退散してきたのでありました(泣)


他にも鳩峰牧場に関する書籍を見つけたり、
茂庭の国道399号線代替路からの飯坂温泉の展望が素晴らしかったり、
小坂峠の被災状況がひどかったり等々の発見もあったのですが、
もう十分長くなったので今回はこのへんで。

*1:別名「屁臭んぼ」。米に害を与えたり悪臭を放つため、東北人なら誰もが嫌がる憎いヤツ。