何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

徳間のムックから

ベーマガやログインをはじめ、80年代中盤には
自作のゲームプログラムリストを掲載した雑誌があれこれ出ていたわけですが、
徳間書店の「プログラムポシェット」「テクノポリス」を忘れるわけにはいきません。
テクポリというと、休刊間近の「美少女ゲーム」路線を思い出す方が多いでしょうが、
初期には各機種選りすぐりのゲームプログラムも掲載されていました。
それと並行して、よりプログラム情報に特化した雑誌が「プログラムポシェット」です。
この頃は名プログラマーYUKIさんが活躍した直後の時代で、
TEIJIROさんや川本健二さん、TPM.COさんといった面々が誌面を賑わせていました。
今回紹介する二本は、自分が特にテクポリやプロポシェらしさを感じる作品です。






一本目の「3-DMAZE」は、テクポリ・プロポシェからのMSXプログラム選集
「FOR MSX SPECIAL」に掲載された迷路ゲームです。
内容はご覧のとおり、迷宮からいかに早く脱出するかを競うゲームで、
ウィザードリィ風の3Dワイヤーフレーム表現が売りです。
このゲームは内容こそシンプルですが、迷宮自動生成機能を備えているほか、
地図を拾うと10秒間だけ俯瞰図で現在地を確認できたり、
クリアするとタイムとともに歩いたコースが表示されるなど、シンプルながら凝った作りです。
気軽に遊ぶにはうってつけで、今でもたまに取り出して遊んでたりします。


徳間系プログラムに通じているのは、そのセンスの良さでした。
プロポシェではプログラムを長さに応じて「1画面」「ショート」「本格」等々の部門に分け、
投稿を募っていましたが、それゆえ限られた長さのプログラムリストで、
いかにアイディアを実現するかに気を遣った作品が多く掲載されていました。
自分としてはこうしたセンスの良さで楽しめるゲームこそが、
徳間系投稿プログラム一番の持ち味でないかと思ってます。
先に挙げた面々や米屋のチャチャチャさん等のスタープログラマーは、
その高い技術力はもちろんのこと、それ以上にセンスの塊のような作品を作るゆえ、
読者の支持を集めていたのです。





ある意味、荒井がもっとも徳間系らしいと思う作品が、二本目に紹介する「DOWNDOWN」です。
内容はスクロールして迫り来る壁を避け続けるだけの単純ゲームですが、
凄いところはなんと1行プログラム、全てのコードが255文字以内に収まっているのです。


徳間系の雑誌には、いわゆる「大作」も少なからず載っていましたし、
伝説的に語られる作品もありますが、一番センスが光っていたのは、
なんと言ってもアイディア勝負の1画面プログラムやわびさびプログラムです。
1画面に収まるコードだけで面白いゲームを作るには、コードを短くする技はもちろん、
無駄をそぎ落とし必要な物のみを残すという、取捨選択のセンスが必要となります。
その結果、良くできた1画面プログラムは、まさに凝縮された面白さのみが残りまして、
その完成度は大作に決して引けを取らないのです。


自分はテクポリやプロポシェはあまり購読していなかったのですが、
幸運にも、周りの友人が買ったのを回し読みしたり、リストを譲ってもらったり、
テープ版のプログラム集*1を買ったりして、結構そのプログラムに触れることができました。
当時の中高生の小遣い額などたかが知れたもので、
全てのパソコン雑誌を購読できたのはごく一部の恵まれた層だけです。
友人同士で雑誌やリストを融通しあうのは当たり前の光景でありました。

*1:荒井が初めて買った市販ソフトはこれでした。