先日の思い出話の続きを少々。
当時パソコンソフトというものは店から買ってくるのもさることながら、
多くは「自分で入力するもの」でした。
その頃のパソコンは電源を入れればあたりまえで内蔵BASICが起動しましたし、
大概の機種にはBASIC入門書を兼ねた分厚いリファレンスマニュアルが付いてきたものでして、
いつでもプログラミングに触れられる環境が整っていました。
特にお金はないけど時間だけはある子供の身分、
市販のゲームはなかなか買えないかわり、あれこれプログラムを入力したり、
組んだりして、遊ぶことはできたというわけです。
そういうわけで、せっかく入力したプログラムはいつでも遊べるようにしておきたいし、
第一入力したプログラムを消すのはもったいないですから、
データレコーダーを導入するのは当然の流れではありました。
MX-10を買った翌月のことでしたかね。
データレコーダーとは、データを音声信号としてカセットテープに記録するための装置です。
当時すでにフロッピーディスクは存在していましたが、ドライブもメディアも
今に比べれば非常に高価で、手を出せる人はごく一部に限られていました*1。
それに比べてデータレコーダーは本体が1万円〜3万円ほどと安価な上、
メディアもよくあるカセットテープを使いましたので、多くの貧乏ユーザーに利用されていました。
荒井が使っていたのは、地元のマイコンショップ*2で買ったNECのモデルで、
FDDを入手するまでの数年間は、こいつに活躍してもらったものです。
データレコーダーがあれば、入力したデータを記録できるわけですから、
「ちょっとがんばって打ち込んでみっか」と、長いプログラムにも興味が出てきます。
ちょうどその頃、「こんなプログラムがあっつぉ」と、
友人がパソコン雑誌の切り抜きをいくつか貸してくれました。
今回紹介する「アップルランナー」は、その切り抜きから入力したプログラムです。
作品は1984年頃に掲載されたもので、作者はK.S.さん。
イニシャルなんでしょうが、切り抜きはすでに手元にないので、詳しいところはわかりません。
プレイヤーは主人公「あっぷらん」を操作して、敵キャラ「ぶっくん」をかわしつつ、
画面内の林檎をすべて食べ、鍵を手に入れ扉から脱出しなければなりません。
まぁ、ご覧のとおり「ロードランナーもどき」ですが、
穴を掘ったり埋めたりといったことはできません。
「アップルランナー」はそれまで荒井が親しんでいた一画面程度のプログラムとは違い、少々リストが長めです*3。
まだ配列も覚えていないキーボードとにらめっこしながら文字を拾いつつ、一日がかりで入力したものです。
そしていざ実際に走らせてみて、PCGで構成されたカラフルな画面、
(飽くまでそれまで遊んだプログラムと比較したに過ぎないが)凝ったゲーム内容に、
「こんな面白いプログラムがあったんだ! こんたごどもでぎるんだ!」とずいぶん衝撃を受けたのでした。
当時のパソコン趣味というものは、まだまだ歴史の浅い分野でして、
新しい出会いや発見といった驚きに満ちあふれていました。
荒井が感じた衝撃とは、「これからパソコンの世界には、きっと面白いことがたくさん待っているに違いない!」
というわくわく感だったのだと思います。
で、その切り抜いた雑誌こそ「マイコンBASICマガジン」だったのですが、
この続きはまた気が向いたときにでも。