何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

十王峠に行ってきた




こないだ新調したヘルメットの被り初めを兼ね、十王峠に行ってきました。
十王峠は旧朝日村(現鶴岡市)にある峠で、出羽三山南麓を越える山形最大の峠道、
六十里越街道北の入口にあたります。
道は全線舗装されており、単車ならば容易に通行可能ですが、
その一方で六十里越の古道も一部残っており、こちらも
近年の六十里越再評価に伴い、トレッキングコースとして整備されています。
今回は手軽に車道の方を見てきました。





峠の入口は旧朝日村の北部、東岩本にあります。
県道44号線から東岩本川に沿って山に向かっていくのですが、
峠を示す標識の類は何もありません。
そのかわりに本明寺という小さな寺がありまして、
これが目印のかわりとなっています。
本明寺は即身仏本明海上人が鎮座していることで知られる寺で、
寺の名前は上人にちなんでいるのでしょう。
即身仏湯殿山系の寺院に特に多く伝わっていますので、
十王峠が出羽三山に至る宗教道路であったことの証拠となっています。
その名残か、峠道のところどころで、小さなお地蔵さんや記念碑などを
いくつか見ることができました。
ちなみに「十王」の名は、かつて峠に十体の仏像があったことに由来しているのだと言います。





岩本川を渡り、中腹にさしかかったあたりから、ちらほらと周囲の展望が開けてきます。
中腹では南西方面に三方倉山や湯ノ沢岳がよく見えますし、
さらに登っていけば、北の谷筋の向こうに、鳥海山に抱かれた庄内平野を望めます。
特に今日は天気が良かったので、日本海や飛島まで見渡すことができました。
鶴岡側から登った場合、鳥海山を背負うことになるため、
鳥海山が見えるということには、意外と気付かないかもしれません。
そしてお地蔵さんがたたずむ鞍部を境に下りに転じると、
目の前に月山、南方の木立の合間から月山ダムと月山道が見えてきます。
鳥海山を背に月山へ。この展望の変化に、この峠がいかなる道であるかを知りました。






鞍部近くのイタヤ清水でのどを潤せば、
反対側の峠口、七五三掛(しめかけ)まではもうすぐです。
七五三掛で有名なのは、なんと言っても注連寺(ちゅうれんじ)でしょう。
注連寺は日本一有名な即身仏、鉄門海上人が鎮座することで知られています。
ちょうど峠の入口には本明寺、出口には注連寺があるわけでして、
十王峠はこの二つの寺を結ぶ道だと言うこともできます。
七五三掛の隣にはまた即身仏で有名な大日坊がありまして、
これだけ狭い範囲にまとまって即身仏が鎮座していることからも、
この道、ひいては六十里越街道が出羽三山信仰と
深く結びついた道であることは判っていただけることでしょう。
六十里越街道はここからさらに塞ノ神峠を経て湯殿山へと続くのですが、
今回は十王峠を見てくることが目的だったので、探索はここまでとしました。





米の粉滝ドライブインのラーメン&チャーシュー丼で昼食にした後、
少し足を伸ばし、旧藤島町の長沼温泉「ぽっぽの湯」に行ってきました。
泉質がいいらしいという噂を聞き及んで以来、どんな湯か気になっていたのですが、
噂どおり、薬か石油のような臭いのする茶色の湯でした。
風呂から上がった後も、ケミカルな臭いが鼻の奥に残ってまして、
いかにも効きそうなかんじです。