何とか庵日誌

本名荒井が毒にも薬にもならないことを書きつづるところ

あれもできます、これもできます

金融街のあちこちでこのところ、投資銀行マンたちは実は大笑いしていた。格好のネタになってしまったのは、「アレクセイ・ヴェイナー(Aleksey Vayner)」という若者。大真面目な顔をした、米イェール大の学生だ。就職活動中の彼は数週間前、UBS銀行に応募して、11ページにわたる履歴書と一緒に、自分がいかに特別な人間かを説明する短いビデオクリップを提出していた。 それから数日もしないうちに、「Impossible is Nothing」という(アディダスCMからとった)タイトルのこのビデオは世界中にメールされまくり、YouTubeにも張られ、ものすごい大人気コンテンツになってしまった。

就職活動の自己PRのため、自分の有能ぶりをこれでもかと見せつけるビデオクリップを制作したら、
そのあまりの奇想天外っぷりが格好のネタとなってしまったというお話。
記事は企業に対して、やたら高邁な理想を掲げて人材を求めることが
いかに荒唐無稽かと疑問符を投げかけるものです。


イソップが奴隷から自由人になった時の逸話を思い出しました。


二人の奴隷とイソップがある貴族に雇われることになりました。
貴族は尋ねます。「お前たちはどんなことができるんだい。」
一人の奴隷は答えます。「私はこれとこれができます。」
もう一人も答えました。「自分はあれとそれができます。」
貴族はイソップにも尋ねました。「で、お前はどんなことができるんだい。」
イソップは答えました。「何も残っていやしませんぜ! あの二人がみんな答えちゃったから。」
貴族はこの答えに感服し、奴隷にしておくのは惜しいとイソップを自由人にしたのでした。


イソップの答えは「あの二人が言ったことは何でもできます。」ということなんですが、
二人と張り合って、そのまま「あの二人が云々」と答えていたら、イソップは奴隷のままだったでしょう。
他の二人にはない、見事な機転を利かせたおかげで、イソップは自由人になれたわけです。
言い換えれば、見事な機転を見せつけたことこそ、イソップの自己PRとなったのです。
「何でもできる」ということは「何もできない」ということに他ならない荒井でした。